関節には必ず連動性がある
こういう関節の連動性を知っている人が、ツボと関連性があると信じ(位置的に)刺激したのが、トリガーポイントのような物理刺激なのではないかと想像します。しかし、これは東洋医学の経絡やツボとは全く違います。これを同じにするのは無理があります。
経絡やツボに似た場所に刺激点があるというだけで、経絡やツボを操作した方法ではありません。なぜなら、経絡やツボは、あくまでも概念だからです。
物理刺激とは違います。経絡やツボがあるという意識が最初にあるから出現するのであって、物理刺激とは違います。たまたま同じようなところに刺激ポイントがあったというだけです。トリガーポイントの場合、効果があるからという理由が出発点だろうと思います。
しかし、ゆっくり、小さく、綺麗な動きを知っていると、その連動性から物理刺激としての方向は容易に想像がつきます。
きっと、このような物理概念を経絡やツボだと勘違いしてしまうので、経絡やツボが物質的な存在だと思ってしまうのでしょう。だから経絡をツボを固定化しようとしてしまうのです。これは大きな間違いだと私は思っています。
東洋医学における経絡やツボ
経絡やツボは深く刺したり、電気刺激をしなくても効果がでますが、物理刺激はあくまでも物理刺激なので一定の刺激量が必要です。この違いを知っていないと物理療法と経絡やツボが同じだと勘違いしてしまいます。きっと、そんな人は多いと思います。経絡を使った方法は、もっともっと軽微な刺激で全身に一瞬で影響を与えます。
しかし、物理現象であっても、このような関連性の現象が起こることから肩関節は、外旋困難な状態になり、いわゆる巻き肩の状態になります。
肩甲骨は外転挙上しやすくなり、右背中は猫背状態になりやすくなります。これは腰痛にも影響を与えています。そして足の上げ下げにも影響し、体幹の軸がブレます。
小さく綺麗にゆっくり動かす動きは関節の遊びを感じ取る方法です。大きく動かすと関節の遊びはわかりませんし、早く雑に動かすと全くわかりません。しかし、一般的な手技療法は、施術を行う際、この3つを重視してしまいます。速く、大きく雑な動きです。スポーツでもスピードは求められますが、スポーツは正確性が重視されるので気づく人は、この違いに気づくでしょう。
動画
この動画では、手首の動きを観察しています。(手首には症状はありません)小さくゆっくり綺麗に動かそうとすると手首は外転伸展位で異常を起こしているのがわかりました。
殆ど動かしていないのに診断が可能です。触診する場所と動かし方にコツが必要ですが、初動を理解していれば誰でもわかる現象です。ここで面白いのは関節の連動性です。
母指のCM関節を外転伸展させると手首の外転伸展の異常が更に明確になります。腕関節だけを動かした時よりハッキリと異常がわかるということです。
CM関節を屈曲していると、この異常はわかりにくくなります。つまりCM関節の動きと手首の動きが連動しているということの証明です。
そして面白いことにCM関節外転伸展時には、腕関節屈曲内転の動きが良くなります。関節は対角線上に異常を起こしやすいということです。これは物理法則に則っています。
逆にCM関節を内転屈曲させると腕関節の外転伸展がやりやすくなり、屈曲内転はやりにくくなります。あきらかにCM関節の動作と位置で腕関節の動きが影響を受けているということがわかります。
また、この動きは肘関節や肩関節にも影響を与えます。肘が伸びにくくなり、外旋しにくくなります。
CM関節に異常があると、CM関節外転伸展位で固定すると、腕関節外旋しながらの肘関節伸展は制限されます。当然、この動きは肩関節外旋や外転に影響を与えます。肩関節の障害とCM関節の位置が関連しているということがわかります。
肩関節の障害のある人のCM関節を観察すると屈曲内転位になっています。この動きは、肩関節に障害のない人もあらわれますが、肩関節や肘関節、腕関節に問題のある人には顕著にあらわれます。
もし、物理刺激を行うとすると、心包経の大陵あたりに外側方向に刺激をすると効果がでる可能性が高いのです。あくまでも物理刺激の話であって、経絡を使っている訳ではありません。
これを磁石で表現すると図のようにN極を小指側S極を母指側で斜め方向に置くことで再現できます。磁石にはN極からS極に流れがあるということなので、CM関節を伸展外転位方向に誘導するように磁石を置いたということです。
磁石の方向性からCM関節の外転伸展方向だと言えます。
逆方向だとCM関節の屈曲内転方向になり、動きが制限されています。
他にも様々な置き方をしてCM関節の動きを観察することができます。
磁石は様々な使い方が可能です。方向性がある道具として優秀な道具だと言えます。
関節観察の重要性と新たな視点:鍼灸師のための動きの研究
鍼灸師にとって、関節の動きを観察することは非常に重要です。なぜなら、鍼灸院を訪れる患者さんの多くが、何らかの関節障害を抱えているからです。一見無関係に見える精神疾患であっても、関節症状がなくても、胸椎上部の左回旋制限や肩甲間部の緊張が見られることが殆どです。そして、この動きの改善が症状の安定に繋がることから、動きは様々な疾患と関係することが分かります。
そもそも疾患別に区別すること自体が不適切なのです。
ゆっくり、綺麗に、小さく動かす
関節の動きを観察する際、「ゆっくり、綺麗に、小さく」動かすことが重要です。ゆっくり動かすことは太極拳やヨガなどでも言われますが、これら3つを同時に意識することは稀です。
この3つの動きの話は、私のセミナーで何度も伝えているオリジナルの発想です。同じようなことを言っている人がいれば、たぶん私の関係者だと思っていただいて良いと思います。この理論は、多くの手技療法を行う方に知っていただきたい知識と現象です。
特に鍼灸師は、動きについて知らない人が多いようなので、是非、動きの研究をしてください。
また、動きは「気」の作用のあらわれです。内臓の状態等も含めて思わぬ関連性があることに気づくはずです。
初動と関節の連動性
どんな動きも必ず初動があります。初動が偏っていれば、大きな動きも偏ってしまいます。初動が綺麗であれば、大きな動きも偏りません。
初動(小さく動く)の綺麗な動きは、初動を行おうとした瞬間に訪れます。初動のはじまりは動かそうと意識した時です。この段階では、まだ運動はされていません。しかし、脳は、どう動くのかを知っています。
実は、動こうと意識した0.5秒前には脳の補足運動野に信号が流れているということは証明されています。この信号は完全な無意識ですが、この信号こそが動きを作っているのです。この信号にエラーがあれば、全てに不具合が生じます。つまり脳からの無意識の信号が動きを作り運動が行われるということです。
この視点に立って動きを観察すると今までの視点とは違う現象が起こっていることがわかります。