指先の極性
昔に、ある先生から指先にも磁石のような極性があるよと教えてもらったことがあります。
母指はS極、小指はN極、示指はS極、薬指はN極、中指はSN極という形です。
脈診をする時に腑の診断をするのは母指(S極)、臓の診断を刷る時は小指(N極)という形で脈を判定するというのも教えてもらいました。
しかし、この考えには、ほんとに悩まされました。
母指がS極なら、磁石のN極を指先に近づけると何らかの変化があるはずです。
しかし、その変化を確実にとらえることができずにいました。
反応がある時とない時があるので、確実な情報ではないと思いました。
そういう時は確実でなくても暫定で決めてしまうということをやってみました。
つまり思い込みです。
何度も同じ思い込みをしていると、それが揃ってきて正しい判断ができるようになってきました。
この時に意識の力は物理的なことより強いのだと発見しました。
これは私にとって大きな発見でした。
この動画を見てもらうと指先の関節には遊びが存在し、その遊びが正常に働いていない場合、基準が狂ってしまうのではないかと思います。
指先を回転しながら屈曲すると示指、中指、薬指、小指は母指側に回転しやすく小指側には回転しにくくなるのが正常です。
しかし、この動画の方は、示指と中指が逆方向に動きやすくなっています。
そして伸展時には、逆回転になるのが普通ですが、中指は示指より伸展時の回転が少なく伸ばしにくくなっています。
やってみるとわかりますが、示指、中指、薬指、小指を拇指側に回転しながら指を曲げると曲げやすく感じます。
特に大きいボールのようなものを持った時のような動きをした場合、このイメージをしながら持つと持ちやすく、逆回転させるイメージをすると大きいボールは握りにくくなります。
しかしDIP関節が捻れるような動きは一般的には認められていませんからそういう発想すらないのだと思います。
円滑なエネルギーの流れが綺麗な動作を作ります。
綺麗な動きは淀みがなく、スムーズで負担が少ないのです。
そして、軽い動きになります。
それに気づかずガンガン筋肉を鍛えるような練習をしすぎるとどこかに破綻がきます。
この動画の方も仕事で手をかなり酷使した状態で来院しました。
このような状態では電気信号が上手く指先に流れず、指先の極性が変化してしまうのではないかと思います。
正しい動きは、円滑なエネルギーの流れが起こりますが、そうでないとうまく流れません。
物理的な動きの中でも関節の遊びは、ごく僅かな動きであり、見過ごそうと思えば見過ごせる動きです。
気が僅かなエネルギーの流れであるとするならば、エネルギーが指先に通っていないことで起こる不具合が起こっています。
それに気づいたものだけが「気」というキーワードを使えるのだと思います。
指先の極性云々より、指先の僅かな動きに注目してみる必要があります。
そうでないと、「気」の考えは単なる理論であり空想です。
私は、このような理論だけの「気」というものに絶対に反対です。
「気」を扱うというのならば、物理現象に影響を与えてこそです。
しかも一瞬で変化させることができてこそだと思っています。
極性があるとするならば、確実に指先まで「気」が流れていなければなりません。
極性が正しく流れることでエネルギーの伝達がスムーズになり、それが動きになってあらわれてくるはずです。
実は、長年治療をやっている治療家でも指先がカチカチという人が多くいます。
手は第二の脳と呼ばれていますが、指先が硬い術者は触診が絶対に下手です。
思い込みをしてしまいやすいので頭で考えなければ理解できないタイプです。
指先まで意識をして円滑な動きをしていれば指先は柔らかくなってきます。
また、指先が硬くなった人を触診すると違和感のあるところとそうでないところが存在するのがわかります。
DIP関節の内側と外側、上側と下側では全く違います。
異常がなくなり正常になってくると、この違和感も消失し、動きがスムーズになります。
これは触診すれば一瞬でわかります。
もちろん、指先にスムーズな気の流れを作れる人でないと、それを触診することは困難です。
検者の身体の状態によっても検出される異常と検出されない異常があるということです。
違和感があると動きに無駄ができて、綺麗に動かせません。
指先の調整をする場合、この違和感が一つの目標になります。
正常な遊びがある動きがあってこそスムーズな動きになります。
このことを知らないで硬いところをグイグイ刺激したりすると逆に余計に硬くなり動きがスムーズでなくなります。
これでは本末転倒ですが、それにすら気づきません。
手を確実に広げ、確実に曲げる。
当たり前のことができるかどうかです。
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